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玩具のよう。
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素朴で無邪気。
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手首に掛ける。腕飾りみたいに。
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これで充分?
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鯨歯の彫刻。元はタイピン。
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余所行きの小さなバスケットと、仔羊革の白いサンダル。模造ダイヤの嵌った白鼠のブローチ。後ろにファスナーのあるワンピース。幼少期を思い起こせば、浮かんでくる記憶。何処かへ出掛ける時には、母と同じくらい綺麗にして貰う。舶来の車はまだ珍しい時代に、アイボリーのビートルに乗っていた母は、洒落込んで出掛けるのが好きだった。大きなイヤリングの揺れる横顔は美しい。車内には外国の音楽が流れている。後で知ったのだが、詳しい人に任せて、自前でBOSEのスピーカーを積んでいたらしい。いつだって、誰かと同じ事はしない、自分の道を行く人なのだ。そんな母に憧れて、私も同じ美術大学に通ったが、やはり母には敵わない気がしている。無類の籠好きだった彼女の影響で、私も籠には目がない。今でも変わらず、小さなバスケットが好きなのは、幸せだった幼少の頃のセンチメンタリズムからか。何が入るの?淑女の嗜みとして、細々した物を少しだけ。それだけでいい。
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