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硝子と琥珀の雛。
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完全なる雛の形。
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銀細工のお顔。
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様々な琥珀の原石。
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艶消しの銀細工の殻が卵らしい。
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琥珀、研磨する前はこんな感じ。
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ふっくりした雛。
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古の硝子細工。
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母の幼馴染に、ヒロちゃんという人がいる。それは旧姓から取った呼び名だったから、ヒロちゃんの子供達はいつでも異議を唱えていたが、幼い頃から慣れ親しんだ呼び名は変えられないものである。私が小学生の低学年くらいまでは、よくヒロちゃんの家に遊びに行っていた。小柄で目の大きなヒロちゃんはとても美人で、いつでも一番奥の部屋に篭って仕事をしているデザイナーのご主人はとてもハンサムだったが、子供達3人はそれぞれ気が強く、少し意地悪で、また何かと喧嘩を始めるのが少々苦手だった。私より一つ下の女の子が一番上で、誰よりも鼻っ柱が強く、いつでも威張っているようなところがあった。私は妙に大人しくて、どこか母の顔色ばかり伺っているような子供だったから、そんな彼女が羨ましいような気持ちだった事を覚えている。ある日、彼女のおもちゃを広げて遊んでいると、小さな硝子細工の雛が転び出て来た。最近は見かけなくなったが、当時はあちこちに売っていて、私は殊に小さな硝子細工が大好きだった。その雛はすっかり忘れ去られていた様子だったし、彼女も邪険に扱っているから、思い切って私にくれないかと尋ねてみると、彼女は暫く私の顔を見ていたが、やはり意地悪な顔をして嫌だと答えた。意地悪な彼女がくれる訳もないし、断られたのは仕方のない事だが、私は何故かとても腹が立ち、その雛をポケットに入れて盗んで帰って来てしまった。その晩のうちにヒロちゃんから電話があり、硝子細工の紛失が母に告げられ、私の犯罪は明白となり、そこは幼馴染のよしみで無罪放免と相成ったのだが、恐らく彼女が告げ口をしたのだろう。瓦落多に紛れて忘れ去られていた雛だのに。しかし私の手癖の悪さは母のせいでもあった。裕福ながら自由に買い物をさせては貰えず、母の許しが出なければ諦める他はなく、自分が本当に欲しい物は手に入らなかった。それが現在の枯れる事のない物欲の根源になっているのかもしれない。兎も角、その雛は私の物となり、その代わりにきつくお灸を据えられた事は言うまでも無い。一人で硝子細工を出して眺めている時には、ふっくりとしたその雛も一緒に並べるけれど、母からのきつい叱責と硝子細工を盗まれた気の毒な彼女が脳裏に浮かんできて、何とも寂しくなったものである。雛に対する飽くなき愛は未だ健在で、相変わらず目にすると集めてしまう。ウクライナの琥珀の原石が雛にしか見えず、デザイン画を送って指環に仕立てて貰った。ようやく届いた雛は、盗んだ雛に何処か似ている。昔から好きな物は変わらない。何十年経とうとも。
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