琥珀狂の原点

アンティーク

母からの愛だったのだと思う。

勇猛なる心を胸に。

古のソビエト琥珀。

かつての繁栄を形にした様。

私の母は強い人である。世界中何処へ行っても、いつも通り、決して相手に飲まれない。百戦錬磨のバザールの商人達を相手に、ちっとも怯まないばかりか、自分の言い値以外は絶対に支払わない。相手が少しでも難色を示せば、手元の品を相手に押し返して、じゃ、いらない、と平然と言ってのけるのだから、相手は途端に、マダム、貴方の値段で売ります、とくる。インド、モロッコ…熟練の商人達からの戦利品が、我が家には沢山ある。おまけに、礼状まで届くのだから凄い人だと思う。ロシアの人は純朴ね、わざと切り替わったばかりの日本円を渡したら、まだ見たことがないでしょう、きっと日本の紙幣だから高いんだろうって、このハートの琥珀が3つも買えたのよ!…その紙幣の額は驚くほどに安いもので、私は流石に気の毒だと言ったら、商売はそういうものよ、と平然としている。私も少しは見習いたいところだが、今のところ、我が母よりも強い人には会った事がない。そんな勇猛な母のハートが、私が琥珀狂いとなった原点なのである。

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