八重のどくだみ

私のお気に入り

玩具のような、小さな花瓶に。

清廉、潔白。

本当に美しい人だった。私の若い頃に、ほんの数年だけ友人になってくれた人。清廉な草花を愛していた。一緒に歩いていると、あれは、と名を教えてくれる。一人静、立浪草、紫露草。これ、可愛いと思わない?そう微笑む彼女が本当に美しくて、そんな時間が大好きだった。八重のどくだみも、彼女の庭にあったもの。分けてもらった草花達は、確かに私の庭のあちらこちらに生きている。小さな花を摘んできて、小さな硝子の器に挿す。彼女が見たら、こういう感じ、大好き、と、またあの美しい顔を向けてくれるだろうか。最期の春、群生した二輪草を見つけたの、見に行かない?と言ってくれたのに、私が先延ばしにしたから見逃してしまった。後悔しても遅い。私は老いたが、記憶の中の彼女は若く美しいままだ。群生した二輪草も、ひっそりと森の中に生き続けている。

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