モロッコのピンク色の宝石、コバルトカルサイト

ジュエリー

妖艶なアフロディーテのよう。

エキゾチックな金の飾り枠。

七色の光を宿して。

素気なくも凛として美しい宝石。

同じ宝石でも個性豊か。

モロッコは不思議な国だ。赤い砂の砂漠、青い家々、テラコッタの要塞のような街、玉石混交なる迷路のようなバザール。長い睫毛の下から小馬鹿にしたような視線を投げる駱駝や、ターバンの隙間から覗く美しい顔までもが、一瞬何か物語の世界に迷い込んだような気持ちにさせる。怪しげな物から得も言われぬ美しい宝石までもが、次々と目に飛び込む。この国に来ると鮮やかな色を躊躇なく身に纏えるのは、この混沌とした色彩の洪水と、静謐とした刺さるような青空と、赤く輝く砂のせいだろうか。美しい物が当たり前のように並べられたケースには、溢れるような宝石達。余計な装飾や照明は要らない。素気なく、自信に満ちて鎮座している。それはどことなく、この国の人々にも似ている。様々な色や形の衣装が個々の美しさを際立たせている。そこに宿る個性と自信が眩しい。件のケースの中で一際鮮やかだった宝石の名前は、アフロディーテ。正式な名前をコバルトカルサイトという。アフロディーテの奔放で情熱的な姿をコバルトカルサイトに、母性愛に満ちた優美な姿をローズクオーツに重ねたのだろう。妖艶で濃厚なピンクが、なんとも蠱惑的な色気に満ちた宝石である。皺だらけの柔らかな紙に包んでもらったのを、ポケットに押し込む。この素気なさがモロッコらしい。美しい宝石も芳しい香水も、皺だらけの紙幣と引き換えに、皺だらけの紙袋に入れてよこす。どこもかしこも、大らかで神秘的で悠然としているモロッコ。きっと、隕石をも静かに内包して眠る、薄赤い砂漠の魔法がかかっているからに違いない。

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